それ、僕が図解します。

世の中のビジネスモデルやいろんなものの複雑な仕組みを、できるだけわかりやすく説明してみたいと思います。主な話題はネットビジネス、不動産、オタクネタ、時事ネタなど。中途半端な説明や、図を使ってないものもあるかもしれませんが、温かい気持ちでお許しください。

軽減税率の打開策はこれならいいんじゃないか。

​  消費税が10%上がる際に、一部の商品について税率を据え置く複数税率制度、いわゆる「軽減税率」が導入に向けて本格化しています。僕は複数税率の導入には絶対に反対です。国民に負担を強いておいて何の恩恵もない不合理な制度だからです。その理由についてはここに詳しく書きました。

 が、まだあまり伝わりきってない感じがするので、もう一回だけ、さらに噛み砕いて説明したいと思います。

そもそもなぜ消費税を10%にするのか?

 消費税を10%にする理由は社会保障制度が維持できないためです。消費税が5%の場合の税収は10兆2千億ですが、これを10%にすると20兆円になります。差し引き約10兆円が新たに社会保障の財源にあてられます。

軽減税率が「将来の負担増」を呼ぶ理由。

 軽減税率は「減税」ではありません。

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 社会保障費に必要な金額は同じはずですから、軽減税率で減った税収は他の何かで補う必要があります。仮に消費税で実現するなら、軽減の対象品目以外の商品は10.35%にする必要があります。つまり、今回の軽減税率導入は、将来税率を上げることの伏線になるんです。軽減税率と普通の税率の差が広がるほど、この傾向はより大きくなります。軽減税率を導入したら、今後、税率が上がるスピードが加速することは間違いありません。

今回の軽減税率で負担が軽くなる金額はいくらか?

 一方で、軽減税率により確実に負担が減る部分はあります。

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 月の食費が5万円の家庭(大人2人子ども1人)があったとしましょう。この金額は平均的な食費の支出の半額以下のつましい金額です。12ヶ月で60万円ですから、軽減される税金は1万2千円ということなります。貧困家庭にとってこの金額は決して小さくはないでしょう。これだけ見れば、軽減税率はウェルカム、ということになると思います。でも、そのお金はどこから来たものでしょうか?

お金はどこから来てどこへ行くのか。

 生鮮食料品の税率を8%にする場合に必要な財源の金額は1兆円です(税制調査会による)。現在の日本の世帯数は約5,000万世帯あります。仮に下位2割の1,000万世帯に1万2千円を配ったとしたら掛かる金額は約1,200億円です。

 この差額の8,800億円はどこに行ったかといえば、上位8割の人のところに行ったわけです。必要な社会保障費を削って、富裕層にも等しく給付をする、という政策。それが軽減税率です。

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 過去、国民にアンケートを取ったところ、8割の人が軽減税率制度に賛成だそうです。そりゃあそうでしょう。社会保障に必要な財源から奪い取った一兆円が自分のところに来るわけですから。自分さえ得になるなら、みんなそれがいいよね。

 まさにこの、8,800億が軽減税率によって効率が悪くなっている部分です。1,200億を簡素な給付措置などの方法で貧困家庭に給付する方法をとれば、社会保障費の財源を1兆円も毀損せずに済むはずなんです。でも、8割の人は「俺に金をよこせ」と言ってるんですから、仕方ないですね。

軽減税率で陳情が増える

 軽減税率が始まると「俺達の商品も軽減の対象にしてくれ」という陳情が増えます。これは別に僕が言っていることではなく、軽減税率を推進している公明党さんが言ってることです。

軽減税率制度の課題(公明党)

https://www.komei.or.jp/policy/various_policies/pdf/20150527_seidonokadai.pdf 

 すでに色々な業界、団体が「俺達を入れてくれ」と声をあげています。こういう陳情が増えるだけで、すでに余計な社会コストがかかります。いままで必要なかったパワーがそこに使われることになります。最終的には「社会保障を減らせ」という議論になるでしょう。それでいいのでしょうか?(それはそれで必要だと思うのですが)

 「インターネットでの商取引は軽減の対象にする」とかどうですかねえ。僕はネットで買物することが多いですしー。

財源をどうするつもりなのか?

 軽減税率を実施するための財源について、公明党さんは下記のように書いています。

公明党は消費増税を実施するための法律に低所得者対策の一つとして軽減税率が盛り込まれている点を重視しています。このため、財源は消費増税の体系の中に組み込まれていると考えます。(公明党 税制調査会長 斉藤鉄夫氏)

軽減税率 実現へ前進 | ニュース | 公明党

 少々わかりにくい表現ですが、頑張って解釈をするなら「軽減税率を実施すること自体が社会保障そのものであるから、別途財源は必要ない」ということになるかと思います。

そもそも10%にする意味があるのか?

 「社会保障費として不足する金額があり、それを補うために消費税から20兆円の税収を確保する理由がある。」というのが消費税を10%にする理由です。 一部の物品を軽減するために別途財源が必要ないのなら、そもそも10%にする必要はないのではないですか?余分な税金を取る必要はありません。

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 税収が19兆円でいいなら、税率は9.5%で十分です。複数税率にした場合、事務コストなどで非効率が必ず発生しますので、同じ税収なら実質的に使える金額は一律9.5%の方が多いです。

 貧困層の方だって、食品以外の買い物もします。食費35%、家賃30%、残り35%はそれ以外の支出です。それ以外の支出も10%よりも9.5%の方が助かるに決まってます。というか、食品だけ軽減されても、他の税金が高かったら結局痛税感は減りません。軽減税率はまやかしの「減税」であり、実際にはその他の負担が増えてるだけなのです。

 軽減税率を推進する方は「貧乏人は飯だけ食ってろ。それ以外の支出は贅沢だ」とでも言いたいのでしょうか。

 とはいえ、軽減税率の導入はもう後戻り出来ないところまで来ているようです。どうしても公約を守り、複数税率を導入するのであれば、他を10.35%にする、や、増税その他の方法で、恒久的な財源をしっかり確保してからにすることをお願いしたいです。でもまあ、増税して財源作るより、「10%やめて全部9.5%にします」っていうほうが支持率には効果ありそうな気がしますけどね。どうなのでしょうか。