それ、僕が図解します。

世の中のビジネスモデルやいろんなものの複雑な仕組みを、できるだけわかりやすく説明してみたいと思います。主な話題はネットビジネス、不動産、オタクネタ、時事ネタなど。中途半端な説明や、図を使ってないものもあるかもしれませんが、温かい気持ちでお許しください。

なんでCMに人生を教えてもらわにゃいかんのか

 リクルートのCMが話題です。オリンピックで生放送を見る機会が増えるタイミングでこの2分間のCMが流れたので、見てる人も多かったのでしょう。映像も音楽もエモーショナルで、目を引くものになっています。ただ、内容としてはいったいどうなのか、と。

 

 僕の尊敬する友人の常見氏も書いてました(http://blogos.com/article/79783/)が、僕も意見を書きたいな、と。

 


【公式】「すべての人生が、すばらしい。」リクルートポイントCM (120秒) - YouTube

 

 気になる点は一つなのですが、あえて3つに分解します。

  1. 「すべての人生が、すばらしい。」というコピーが今の時代に合わない
    女性が選挙権を得てから今年で69年。差別を禁じた日本国憲法施行から67年、雇用機会均等法から約30年も経っており、もはや「自分の生き方を肯定する」というのは当たり前の価値観になっていると思います。「どこを走ったっていい。自分だけの道があるんだ」と言われても、正直「いつの時代の話だ?」と思いました。

  2. 結婚式のカットが3回も挟まれていること
    リクルートポイントはゼクシィの利用でも貯まるのでしょう。この文脈の中で結婚式を入れる意味は、それがクライアントの意向だから、というのに違いないかなと思います。自分だけの人生を、という文脈だし、絵柄のひとつは「エレーーーーーン」(from 『卒業』)状態なので、「好きな人と結婚しましょう」という意味に採れてしまうのですが、この2分のCMの中に3回も入れることか?と思いました。好きな人と結婚できない事情って、ゼロっではないものの、そんなに多くないかと。むしろ、3回ある結婚式のうちに一つでも同性婚が含まれてたら神だけど。

  3. 「人生はマラソンだ」という言葉をミスリードしている
    人生がマラソンに喩えられることは多いです。最初に言ったのは誰?というのが特定するのも難しいほどに。なので、「本来の意味」というものも存在しないです。それでも、あえて言うなら、人生をマラソンに例える時、「短距離走じゃないんだから、頑張りすぎるな」とか「目先を追うな」みたいな意味で使われることが多いです。敷かれたレールの上を競い合いながら進む、という意味では聞いたことが無いです。

 実際には、「人生は、マラソン」です。間違いなく。

 自分が生きたい人生、進みたい道を進むならなおのこと、先の先、ゴールをしっかりイメージして、しんどいけど頑張る、というものでしょう。そう思って、毎日頑張っているのに、「マラソンじゃない」とか言われると、非常にしらけてしまいます。目標を見据えて頑張っている人ほど白けてしまうメッセージになってしまっているのはとても残念です。これで感動する人は、就職活動とかで辛い目に会って相当悩んでる人か、逆にちょっと上がっちゃった人か、どっちか何じゃないでしょうか。

 

 ところで、このCM、初めて見た時に、この2つのCMを思い浮かべました。

 

 ひとつはこれ。九州新幹線のオープンの時CM。東日本大震災でお蔵入りになってしまい、幻のCMになってしまいましたが。


祝!九州 九州新幹線全線開CM180秒 - YouTube

 このCMの何がいいかって、みんなが素直に一つのことに喜んでること。同じ未来に笑顔で期待していること、です。今の時代、みんなが素直に一つのことに喜ぶことができる、なんてことあるでしょうか?ましてや、新幹線です。通すにあたっては、どこを通すだの、通さないだの、駅を作るだの作らないだので、多少なりともモメたはず。色々あったけど、通ってよかったね、と、九州にあまり縁がない人も一緒に喜ぶことが出来ました。このCMが東日本大震災の前に作られてた、というのもちょっと感動です。ちなみに、調べてみたら上のリクルートのCMと同じディレクターが作ったそうです。様々なモブカットをつなぐ、という手法は全く同じなのですが、(そして、こっちもやっぱり結婚カップルがいる)全然違いますね。なんかすごいです。

 

 もう一つがこれ。能年ちゃんが爆発的にカワイイCMです。


かんぽ生命TVCM|「人生は、夢だらけ。」篇|60秒 - YouTube

 同じ「1分以上の長いCM」で「人生」を扱うCMです。映像的には、あたまのほうはスローモーションや一つのカットの区切りを大きめにして、後半に向かってカットを短めにしてスピード感を盛り上げていくのがいいです。テーマとしても、「辛いこともあるけど、さっさと忘れてスキップしよう」っていうあっけらかんとした前向きな感じと、能年さんの若さがマッチしています。ターゲット的にも新社会人にかんぽ生命に入って欲しい、っていうのがあるのでしょうね。ノンターゲットにとって鼻につくわけでもなく、ターゲットにとってはちょっとウキウキするような、いい雰囲気があると思います。

 

 別に、CMに人生を教えてもらわなくていいんですよ。ただ、ちょっと背中を押してくれたり、なんだかウキウキしたり、そういうのでいいんですよ。

 

 生命保険は、扱っている商品からして、長いCMで「感動系」のものを結構作りがちです。


アフラック がん保険 アフラックストーリー8 井上さん篇 60秒 - YouTube

 氷の上でプロポーズするやつです。いい話なのですが、CMで見せられると「お涙ちょうだい」みたいな感じがしますね。

 

 

 いま流れてるやつだとこれか。


【高橋大輔】 日本生命 CM "大輔ボトル" - YouTube

 このボトルにも、いろいろ突っ込みたいのですが、やめときます。

 

 

 だいぶ昔ですが、これは好きでした。


日本生命「愛する人のために 〜改札篇〜」 - YouTube

 谷川俊太郎さんの詩がいいと言ってしまえばそれまでですが、「お金に、愛情をこめることはできます」というのはジーンと来ます。人生と金。っていうシンプルなテーマ。

 

 家族をテーマにしたものといえば、これ。


東京ガス CM 家族の絆・お弁当メール篇 - YouTube

 テンプレというか、ありがちなストーリーではあるのですが、ポップな感じのメッセージと女優さんの演技で、あまり狙い過ぎな感じになってないです。最後お母さんが涙出さないのがいいです。

 

 ロングCMは、企業からの「メッセージ」「問題提起」「理念」みたいなのを伝えることが目的なのだと思います。これとか、いいですよね。


ダヴ リアルビューティー スケッチ - YouTube

 これは安易に言葉に出来ないメッセージを映像とストーリーで本当にうまくみせて、見た人の心のなかに、しっかりとしたメッセージを残しているなあと思います。これの最後に「洗顔だけで」みたいなウリ文句が入ったら超がっかりですが、そういうのも無くて、非常に余韻がいいです。こういう「ブランドメッセージ」みたいなCMの増加と景気の関連も気になります。

 

 テンプレ的なストーリーといえば、こういうのも。


【日本語字幕】世界中が涙したタイの感動CM - YouTube

  これと同じ話を1時間のドラマでやられたらちょっと残念ですが、3分ぐらいだと結構いいなと思います。僕は好きですが、ちょっとベタ過ぎて好き嫌い別れるところかも知れません。これを一日に何回も見る、となると、ちょっとお腹いっぱいになってしまうかも。ちなみに、作品中に出てくる金額は、日本円にすると約240万です。登場人物にとってはかなりの負担感がある金額です。

 

 なんだか「泣けるCMまとめ」みたいになってしまいましたが、何が言いたいか、というと、伝えたいことをちゃんと伝えるのに、必要なのはスポンサーのセンスだ、ということです。やりすぎず、言いたいことはちょっと抑えて、でもしっかり心に残るものを作る。そのためにはディレクターの腕だけではなく、スポンサーの理解とかセンスがすごく大事なのではないかなあと思います。