それ、僕が図解します。

世の中のビジネスモデルやいろんなものの複雑な仕組みを、できるだけわかりやすく説明してみたいと思います。主な話題はネットビジネス、不動産、オタクネタ、時事ネタなど。中途半端な説明や、図を使ってないものもあるかもしれませんが、温かい気持ちでお許しください。

「セガなどゲーム15社連合」がうまくいく理由、いかない理由。

今日の日経新聞に出ていた記事で、随分話題になっていたのがこちら。

セガなどゲーム15社、スマホ向けで連合 グリーなど経由せず

セガなどゲームソフト15社はスマートフォン(スマホ)向けゲームの顧客開拓で連携する。ゲーム画面から相互に顧客を誘導しあったり、共通の窓口となるサイトを設けたりして利用者を囲い込む。参加企業は年内に約30社に増え、利用者数は延べ4000万人超に膨らむ見通し。各社からソフトを集めて配信するグリーなどに頼らない仕組みを構築し、急成長するスマホゲーム市場を攻略する。

http://www.nikkei.com/article/DGXNZO58740000R20C13A8TJ0000/

ゲーム開発会社が従来のグリー・モバゲーなどのプラットフォーム上でゲームを展開した場合、プラットフォーマーに30%程度の配信手数料を払っていました。AppleGoogleも同じく30%の手数料を取りますので、仮に、スマートフォンのアプリでグリー・モバゲーのプラットフォームを利用するとなると、単純に足すなら60%もの料率になります。

そこで、ゲーム会社同士が手をつないで、横にお互いに集客するプラットフォームを作れば、グリー・モバゲーに払う手数料が減らせるのではないか、という試みです。

しかし、普通に考えて、うまくいきそうにないと思ってます。理由は次の3つ。

【うまくいかないと思う理由】

1. 単に相互に告知を貼るだけで人が来るわけがない。

 流行ってるゲームに、別のゲームへのリンクを貼ったら、人は移動します。これはまあ当然です。今日、EAのPlants VS. Zombies  2が、リリースわずか1ヶ月ほどで1,600万DLものダウンロード数を叩きだしたというニュースが有りましたが、(ニュース)まさにこれは前作のファンが一気に押し寄せたのも理由の一つです。

 しかし、実際にはそう簡単にはユーザは流れてくれません。LINEを見れば明らかです。LINEのゲームは、どれもそれなりにユーザ数を稼いでいますが、その中で比較すると、集客に成功しているアプリとそうでないアプリが明確に存在します。あるアプリから別のアプリに誘導するときに、ユーザの属性・趣味嗜好・タイミングなんかもきちんと検討して誘導しないと、意図したようには流れてくれないのです。

 ゲーム会社同士でお互いにリンク貼りましょう。だけで送客できるほど甘くないと思います。

 

2. 互いに収益性が違うのに、どうやってレベニューシェアするの?

 ゲームユーザ一人あたりが稼ぎだしてくれる利益のことをLTV(Life Time Value)と呼びますが、これは、アプリによって全然異なります。Facebookみたいに広告で回すものと、ラブライブ!みたいにゴリゴリユーザ課金するもののLTVは、当然異なります。ユーザ課金の中でも、パズドラのように課金しなくても勝っていけるものがあれば、そうでないものも有ります。

 すべてのアプリの収益性が同じならば、「今月は100人送り出して、150人迎え入れたから、50人分の集客コストを払いますね」みたいなバーター取引はフェアですが、実際にはLTVは異なるので、人数単位で調整すると、必ず「割り勘負け」が発生します。

 「割り勘負け」が発生しないようにするにはLTVの高い「稼げるアプリ」が、LTVに応じた調整コストを負担するようにするしか無いですが、それだと単なる広告となんの違いもありません。

 

3. ド新規さんはどうやって獲得するの?

 このネットワークだと、すでに何かのゲームをやっている「ゲーム好き」ユーザの獲得はできますが、ネットワークの外にいる全くの新規ユーザは獲得できません。回遊するユーザも大事ですが、いつかは消えます。新規流入のユーザを熱く求めています。2.の「LTVが高いアプリ」は特にその傾向が有ります。そのためにテレビCMもガンガン出稿しているのです。なんでテレビCMまで打って集めてきた新規ユーザを他に流さなきゃいけないのか、意味がわかりません。つまり、LTVが高く、ユーザがたくさんいる、バリューのあるアプリほど、このネットワークに参加する価値が低いのです。クソゲーばっかり集まってるプラットフォームには誰も来ませんよね。そういうことだと思います。

 

と、言うわけで、全方位的にうまくいかないと思っているのですが、あえて、うまく行かせるための方策も考えてみました。

【こうしたらいいんじゃないかという打ち手】

打ち手1. とにかく「パズドラ」に来てもらう。

 パズドラがだめなら、Clash of ClansでもAngry Birdsでもなんでもいいんですけどね。核になるタイトルに来てもらうのがいいです。単に貼るだけでは送客できませんが、全体のボリュームがでかければ、クリック率は低くても結果的に送客される量は多いです。ネットワーク上を回遊する人数の流量が増えると、それだけ変化を捉えるのが容易になるので、「こういう傾向がある」というのもつかみやすくなります。なので、目玉タイトルが欲しいです。

 ほんとは共通コインとかポイントとかそういうのも作れたらいいんですけどね。レギュレーション上難しいかもしれません。

 

打ち手2. FacebookかLINEかCOMMか任天堂SCEかAmazonに来てもらう

 集客・送客やLTVの不均衡をどう調整するか、みたいなノウハウは、やっぱりゲーム会社よりも、プラットフォームを運営している会社のほうが強いです。なので、その集客プラットフォームの運営はそういうところに任せてしまいましょうよ。COMMに任せるんだったらDeNAだからモバゲーと一緒じゃないかって?いや、違うんじゃないですかね。

 あと、15社のメンツがわからないのでいい加減なことは言えませんが、なんとなく全部日本の会社のような気がします。そんなガラパゴスなネットワークを打ち砕く意味でも、FacebookかAmazonが希望です。

 え、SEGAも昔はゲームハード作ってたしプラットフォーマーだろうって?いや、うん。はい。たしかにそうですね。

 

打ち手3. 共同ポータルサイトをガンガンテレビCMする

 共同ポータルサイトがテレビCMで告知されたら、個別のアプリは自分でテレビCMやる必要がなくなります。ネットワークに新規の顧客を入れるのが共同ポータルサイトの役割です。共同ポータルサイトの中での配置は、テレビCMの費用負担に応じて決めればいいんじゃないでしょうか。ただ、AppStoreやGoogle Playのランキングを上回るようなボリュームが取れるリーチ方法となるとちょっと難易度高いですけどね。

 

と、いうわけで、打ち手はちょっと甘いような気もしますが、とりあえずまとめてみました。もっといろんなプレイヤーが参入してきて、いろんな事件が起こると楽しいなと思っています。では。