それ、僕が図解します。

世の中のビジネスモデルやいろんなものの複雑な仕組みを、できるだけわかりやすく説明してみたいと思います。主な話題はネットビジネス、不動産、オタクネタ、時事ネタなど。中途半端な説明や、図を使ってないものもあるかもしれませんが、温かい気持ちでお許しください。

サントリー・トヨタ・ローマ帝国の帝位継承を整理してみた。

 サントリーの次期社長に、ローソン・新浪剛史会長が指名された、というニュースが流れました。

大手酒類メーカーの「サントリーホールディングス」は、この秋にも、新しい社長に、大手コンビニチェーン「ローソン」で長く経営トップを務めた新浪剛史会長を起用する人事を固めました。

 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140624/k10015449981000.html 

  生え抜きではなく、外から実績ある経営者を連れてきた大胆な人事は「日本でもプロ経営者に経営を委ねる時代がやってきた」という好評で受け止められています。

 

 サントリーといえば、ついこないだまで非上場だったり、キリンと経営統合しようとしたけど、やっぱりカルチャーが違うのでやめたり、と、オーナー一族の支配が強い会社、という印象です。そこで、これまでの社長をまとめてみました。

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 基本的には鳥井家・佐治家による継承が行われています。佐治敬三さんは創業者の鳥井信治郎さんの次男なのですが、小学校の頃、母方の親戚の佐治家に養子に出されています。サントリーの大株主に「寿不動産」という会社があるのですが、この会社が鳥井家・佐治家の資産管理会社です。

 これを見ると、社長は鳥井ー佐治ー鳥井ー佐治の順番だったので、次は「鳥井」のはずだったのですが、そうならずに、いったん、縁者ではない新浪さんが指名された、ということですね。

 現在の佐治信忠氏は「次の社長は50代がベスト」と言っています。自身が社長になったのも55歳の頃だったのでそれを意識してのことでしょうか。新浪氏も今年55歳です。

 ところで、現在サントリー食品インターナショナル社長の鳥井信宏氏は47歳。新浪氏はすでに実績ある方なので、信宏氏がしかるべき年齢になるまでの中継ぎ、ということはないと思いますが、創業家とそれ以外の社長が権力をキャッチボールすることはたまにあります。

 

 株式会社で大政奉還といえば、まっさきに思い浮かぶのは、やはりトヨタ自動車です。トヨタ自動車系譜もまとめてみました。

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 トヨタ自動車は過去に2回「大政奉還」をやっています。1回目は4代社長中川不器男氏から豊田英二氏に渡した時。そして2回目が10代社長渡辺捷昭氏から現社長の豊田章男氏に渡した時、です。

 英二氏は14年以上の長きにわたって60−70年代の高度成長期に活躍しました。現在の章男氏も様々な問題と闘いながら、会社の業績を伸ばしています。トヨタ自動車大政奉還はまずまずうまくいってるのではないでしょうか。

 

 「次を誰に渡すか」というのは、創業家でない人が指名された場合、いつから意識するものなのでしょうか。歴史上、「お前の次はこいつな」と中継ぎであることを明言して権力を渡されることが見られます。

 そのなかでも一番分かりやすいのが、古代ローマ帝国の初代アウグストゥスと、2代目ティベリウスの関係です。

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 アウグストゥスは、自分の後継者に自分と血縁であることに異常な執着がありました。自身は男子に恵まれず、一人娘を嫁がせるも旦那が死に、再婚させて待望の男子の孫が生まれても夭逝します。

 そこで、自分の姉の孫であるゲルマニクスを後継者にと期待します。ゲルマニクスは有能な指揮官であり、誠実な人柄でもあったことから、ローマ軍の兵士たち、そしてローマ市民からの人気も高い人物でした。

 しかし、いかんせん、10代とまだ若い。そこで、中継ぎに、と、有能な部下であった、ティベリウスを指名します。このやり方も徹底しており、ティベリウスにその時の妻と別れさせ、自分の一人娘のユリアと結婚させます。しかし、ティベリウスは前妻を深く愛していたので結局離婚。そこで、今度はティベリウスを自分自身の養子にして、さらに、同時にティベリウスに対して、ゲルマニクスを養子にするように命じます。

 当時、養子にする、というのは自分の後継者に指名する、という意味でした。

 ティベリウスは、アウグストゥスから「次はお前だけど、その次は絶対ゲルマニクスだからな」という形で使命を受けたことになります。

 

 さて、アウグストゥスが亡くなり、いよいよティベリウスの治世になりました。彼は極めて有能な政治家であり、戦略家です。際限なく膨らむ国家財政に危険を感じて、民衆の人気を失ってでも緊縮財政をやりとげます。しかし、単に緊縮にするだけではなく、国家のインフラを保つため、また、外交のためにはしっかりと投資をする、という健全な国家運営をします。厳しい人柄だったので、友達は少なかったようですが。

 ティベリウスは結構高齢でした。いよいよ後をゲルマニクスに渡そう、というところで、ゲルマニクスマラリアに罹って死んでしまいます。ティベリウスはどうしたか。自分自身にも子供がいたのですが、その子供には継がせずに、アウグストゥスの指示を守って、ゲルマニクスの子供、カリグラに皇位を渡すのです。この後、いろいろ混迷の時期もあったりはしますが、五賢帝の時代など、ローマがローマである、栄光の歴史へとつながっていくのです。

 

 トヨタや、ローマ帝国を見ていると、うまくいく大政奉還には、なにかルールがあるような気がします。

  • とにかく、抜群に優秀な人間を後継者に指名すること。
  • 創業家に有能な後継者が出てくるまで、何代でも粘り強く待つこと。
  • 「自分は中継ぎだ」などと思わずに全力でやり遂げること

 他にもあるかもしれませんが、そんな風に思いました。他にも創業社長で大きくなって、後継者をどうするんだろう?っていう会社はいくつもあります。ソフトバンクとかユニクロとか。ローマ帝国とか参考にしたらいいかもしれません。