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それ、僕が図解します。

世の中のビジネスモデルやいろんなものの複雑な仕組みを、できるだけわかりやすく説明してみたいと思います。主な話題はネットビジネス、不動産、オタクネタ、時事ネタなど。中途半端な説明や、図を使ってないものもあるかもしれませんが、温かい気持ちでお許しください。

ピエリ守山が閉店しない理由を想像してみた。

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 ピエリ守山は、滋賀県守山市にあるショッピングセンターです。2008年にオープンしたのですが、その直後、近隣にイオンモールをはじめとする大型店舗が相次いで出店。真新しい施設には、週末でもほとんどお客さんがおらず、「生ける廃墟モール」などとして有名でした。

生ける廃墟モール「ピエリ守山」の行く末は? 店舗ついにヒトケタ、今後は「何も定まってない」 (1/2) : J-CASTニュース

 元はといえば、琵琶湖畔という立地を生かして『豊かな自然に囲まれて一日を“クルージング”』という理想の元に作られた商業施設。いっそ潰してしまえばいいのに、なぜこんな幽霊船みたいな姿を晒し続ける事になってしまったのでしょうか。

 

◯ 売却の経緯

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図:時系列の売却の経緯

 オープンから2ヶ月後、近隣のもっと便利な場所に「イオンモール草津」などが開業。2010年には、リーマンショックの煽りを受け、運営者の大和システムが破綻してしまいます。その後、転売を経て、現在は、マイルストーンタウンアラウンドマネジメント株式会社が所有し、JASDAQ上場の不動産デベロッパー、サムティ(3244)との共同事業として運営していくことになっています。

株式会社ピエリパートナーズの株式取得及び商業施設「ピエリ守山」について

 

◯ 大部分閉鎖なのになぜ閉店しないのか?

 2014年2月から、買い物客が立ち入れるエリアが大幅に制限されることになりました。 グレーの部分が立ち入れない部分。ほとんど入れません。営業している店舗は4店舗のみ。

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図:2月からの入場可能エリア

 会社側は2014−15年に再度オープンする、とアナウンスしているらしく、それであれば、「改装のため」などの理由が書かれてもいいものですが、どうやら掲示にはそういった言葉はない模様。

 改装するのなら、一旦閉じて、大々的に工事すればいいのに、なぜ中途半端に4店舗だけ残しているのでしょうか?いや、そもそも、これだけの巨大施設。維持費だけでもそこそこかかりそうなのに、なぜ潰れずに残っているのでしょうか?

 

◯ 売買価格

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図:ピエリ守山付近の路線価図

 なぜ潰れないかの理由を説明する前に、まず、この物件がいくらぐらいかを計算してみたいと思います。

 この辺りの路線価は1㎡あたり、36,000円。ピエリ守山の敷地面積が137,800㎡ですから、土地の値段は約49億61百円の計算になります。建物価格がいくらになるか?ですが、総事業費が約100億円とありますので、土地の値段を引くと、新築時の建物や設備は約50億円。店舗用鉄骨造建物の法定耐用年数34年のうち、5年が経過しているので約43億円が現在の建物の価値。土地+建物で約92億円になります。(端数切り捨てで計算)

 ただ、ピエリ守山は開業後すぐに幾つもの主要テナントが抜け、ショッピングモールとして難しい立地ということが証明されています。おそらく、建物と設備に対してはかなり厳しい査定がされたはず。建物43億の2割強。9億円程度ではないでしょうか。

 土地+建物で58億円ぐらいが売買価格だったのではないかと推測します。

(参考資料) デパート通信・琵琶湖クルージングモール・ピエリ守山

 

◯ 税金上の利得が毎年1,000万円以上。

 現在、テナントが入居していますが、おそらく、賃料はほとんどとっていないと思われます。坪1,000円とかじゃないかと想像してます。20坪の店でも2万円とか。共用部の電気代とか警備費用とかをギリギリ賄えるぐらい。(あるいはそれも賄えないぐらいの低い額)

 一方、コストは掛かります。一番大きいのは減価償却費と固定資産税です。残存年数が29年ですから、建物9億円を単純に29で割るとして、減価償却費は年間約3,100万円です。(土地には減価償却はない。)

 現在の持ち主である、マイルストーンターンアラウンドマネジメントが他で3,100万円以上の利益が出ていれば、その分の利益と相殺することが出来ます。それに対する実効税率40%をかけると、実に年間1,240万円の節税効果が期待できます。

 一方、すべて閉店して店舗数がゼロになってしまうと、『資産として価値の無いもの』とみなされてしまう可能性があります。もうしそうなってしまったら、建物の残価をその年にすべて償却してしまわないといけません。なので、賃料を極端に低く設定したとしても、ゼロになる事態は避けているのではないかと思っています。

 ただ、60億円近い投資金額に対して、見返りが1,240万とはあまりに小さすぎるので、そんなことするかなあ?という疑問が残ります。共同事業者のサムティは上場会社なわけだし。あり得る使い道としては、この土地を担保に金融機関からお金を借り、その資金で別の事業や投資をする、という可能性があります。商業施設としては再興が期待しにくい立地なので、リゾートマンションなどにするのかもしれません。計画が固まるまでは寝かせておいても、節税効果だけは享受できます。

  

◯ オペレーティング・リースとは?

 実は、上記の手法は、それなりに一般的に有名な方法で、「オペレーティング・リース」という名前がついています。通常は、価格が莫大で、かつ中古価値がある程度安定しているものが選ばれます。土地や都心のビルなどでも不可能ではないですが、よく使われるのは「飛行機」です。

 旅客機は1機あたり数十億〜100億円程度します。旅客機を買うのはJALANAなどの航空会社なのですが、キャッシュで一括で買うのではなく、リースのために作られた特殊な組合が一旦飛行機を買い取り、組合が航空会社にリースします。

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図:オペレーティング・リースのスキーム

 この時、組合が飛行機を貸し出す金額は、組合が負担する減価償却費とローンの利息よりも、安い金額になっており、組合には毎年損金が出る価格になっています。

 組合はその損失を投資家に分配します。投資家は、その年の別の事業の利益と通算して、節税ができる、というわけです。

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図:オペレーティング・リース実施時の年度ごとの収支イメージ

 しかし、まだ問題が残ります。減価償却費と支払利息の合計金額は、毎年減っていきます。最終的にはリース代金よりも低くなり、組合に利益が残るようになってしまいます。

 そうするとどうなるか。実は、航空機を売ってしまうのです。売り先は航空会社のこともありますし、別の金融機関のこともあります。海外、特に新興国のエアラインは、収益改善のため積極的に中古航空機を物色しています。航空機はお金を生む資産なので、結構いい値段で売れます。

 航空機を販売した時に発生した利益は投資家に分配し、組合は解散します。投資家には大きな利益が発生し、当然たくさんの税金を払わないといけないのですが、同じ年に、大きな買い物をして、費用を発生させることで、その利益と相殺します。大きな買い物とはなんでしょうか?新しい飛行機、ということもありますが、不動産物件のこともあります。不動産物件の場合は、あまり利益がでそうにないけど馬鹿でかい土地、そう、客の入らないショッピングモール、とか。

 

◯ まとめ

 オペレーティング・リースの仕組みそのものは手法が確立しているものですが、ピエリ守山がその目的で購入されたかどうかはわかりません。僕の想像であり、推測です。もしかしたら、本気でこの施設に夢を持ち、再生させようとしているのかもしれません。この規模の土地だと、固定資産税も相当かかるはず。減価償却費は追加のキャッシュアウトはありませんが、税金は必ず発生します。当初の買取価格で、数年分の固定資産税額を見込んでその分を安く買ってるとしても、いつかはその効果がなくなります。その時が、この不動産をほんとうの意味でどうにかしなければいけないときです。

 この施設の運命が、美しい湖のほとりで静かに沈没していくしかないのか、周辺住民の夢をのせ新たな航海に漕ぎだすのか。それが分かるのは、まだ少し先のことになるでしょう。

 

※追記
 どうも、きちんと再生計画は進んでいたようで、2014年12月17日に再オープンだそうです。やはり、オペレーティング・リースによる節税、ではなかったみたいで、僕の見込み違いでした。