それ、僕が図解します。

世の中のビジネスモデルやいろんなものの複雑な仕組みを、できるだけわかりやすく説明してみたいと思います。主な話題はネットビジネス、不動産、オタクネタ、時事ネタなど。中途半端な説明や、図を使ってないものもあるかもしれませんが、温かい気持ちでお許しください。

HISの新会社の資本比率が49%な理由

 どうも、チャンスがあれば航空会社の経営にかかわってみたいと思っているRick08です。HISさんがアジアアトランティックエアライン(AAA)の運航を7月から開始するという発表がありました。(ニュース

 

 LCCではなく、国際チャーター便として、需要があるタイミングで需要がある路線だけ飛ばすという形態です。あまりなじみがありませんが、実は結構飛んできてます。たとえば香港の人たちは毎年冬になると雪を見るために北海道観光に来ます。香港エクスプレス航空は北海道に定期便を飛ばしてませんが、冬季だけは香港=北海道をチャーター便で飛ばしています。

 

 ところで、新しいAAAの資本構成ですが、こんな感じになっています。

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 日本のHISが49%を保有し、あとはタイ資本となっていて、実は日本から見ると外資系企業です。(※HISの現地法人の資本構成がちょっとわかりませんが...)なんでこんな構成になっているのかというと、「カボタージュ」「以遠権」という二つの理由があります。それぞれを簡単に表すとこんな感じ。

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 「カボタージュ」とは、簡単にいうと、国内線のチケットを販売する権利。「以遠権」とは、一度着陸してから、さらに第三国へ出国するときのチケットを売る権利。国と国との間で取り決めがあり、基本的にはどちらの権利も国内の航空会社に限定されています。なので、「バンコク発―成田―ハワイ」みたいな便を出しても、AAAは全区間通してのチケットしか売ることができず、成田で降りたお客さんの座席を「成田ーハワイ」便として売ることができない、というのが原則です。

 

 ただし、原則であって、国と国との力関係によってはどちらかに有利だったりすることもあります。かつて、日本とアメリカの間にはアメリカに有利な以遠権があったのですが、これを解消するのにかなり長い時間がかかりました。

 

 最近はどこの国でも「自国にハブ空港を」という思いがあり、ほかの国と「カボタージュ」や「以遠権」についての規制を緩めるようになってきました。これらの動きのことを「オープンスカイ」といいます。日本とタイ国の間でも2012年11月にオープンスカイ協定が結ばれ、二国間輸送が相互に自由化されました。(国土交通省発表)これによって、AAAは「成田―北海道」便や「成田―ハワイ」便を販売できるようになり、ビジネスチャンスが広がったので、今回の就航につながりました。

 

 冒頭の「なぜ49%なのか」という理由ですが、この「オープンスカイ」がその理由です。現在、日本がオープンスカイ協定を結んでいるのは、二十数か国。それに対して、タイはASEAN諸国と自由化を進めており、さらにEUの国との間でも自由化しています。拠点をタイに置くことによって、オペレーションのコストも下がります。

 国際チャーター便にとって、どの時期に、どの路線を飛ばすか、その可能性が大きければ大きいほど、ビジネスの可能性は広がります。AAAが日本の会社ではなく、タイの会社として作られたのはそういう理由があるのですね。

 

 ところで、最近、エアアジアジャパンからエアアジアが資本を引き揚げる、みたいな報道がありました(ニュース)。エアアジアといえば、まさにアジアを代表するLCCなわけですが、いまいち押されている立て直しのために強い態度に出ることができるようになったのも、こうしたオープンスカイの動きが背景にあるといえます。エアアジアが単体で日本市場に入ってきて、国内線の航空券はかなり安くなることが期待されます。